恋人関係に関する考察(あとでこのページは破って捨てること)

by Motandhel

 こんなことはわざわざ書き記しておくべきことではないだろうし、後々読み返したときに自分で呆れることになるかもしれないが、考えを整理するために書くことにした。

 アズルと継続的な関係を続けて気づいたことがある。それは自分が恋人関係とよばれるような人付き合いに対してなんの知識も持っていないということだ。まずここでは前提として、僕とアズルは「恋人関係にある」と仮定する。そのうえで、恋人関係をどのように捉えればいいのかを整理したい。

 関係というものは一方的には成立しない。双方の絶対的あるいは相対的なポジションが定まっていなければ発生しない作用だ。たとえば主従関係のように、主たる位置と従たる位置に所属するもの同士の関係は明確に主従関係と言える。しかし僕たちにそうした明確なポジションやロールは存在しない(そういえば先日そんなロールプレイをアズルが始めた事を思い出した。想像力に乏しい僕はロールプレイが苦手だ)。

 視点を変えてみると、恋人関係はその双方のポジションの違いからいわば力学的に自然発生する関係ではなく、平等な存在である二者があらかじめ定めた条件の下で結ばれる関係であるとも言えるかもしれない。これは力学というよりも言葉で定めるルールに支配される関係だ。

 ルールの下に成り立つ関係はほとんど契約と言っていい。どちらかというとこの方が一般的な恋人関係の解釈に近いだろうと思う。なぜなら恋人関係には何らかの暗黙の約束事があるケースが多く、それを破ると関係が解消されるからだ。恐らくかつて僕の腹を刺した人は僕がこの約束を破ったと感じたに違いない。

(整理のために書き記しておくと、僕は「友達」は関係ではなく一方的にも成立しうる評価の一つではないかと考えている。僕が友達と思っている人でも、僕のことをそう思っていないことがあるからだ(その証拠に、ダンデは僕のことを友達だとは思っていないと明言した)。恋人関係において、どちらかのみが相手を「恋人」と認識していることはありえない。それはただの誤解に過ぎず、そしてその誤解は人に刃物を持たせる)

 そう考えれば、いくらか恋人関係の定義について考えやすくなる。僕がアズルの恋人たる所以は、つまりそのルールを条件としてアズルが僕をそう認めて(定めて)くれているからということになる。

 結論として僕が知らねばならないのは、僕がどんなルールを守らなければいけないのかということだ。アズルの恋人でいるために、僕は何を守るべきだろう。或いは何を破ってはいけないのだろう。彼の恋人であることの条件とは何か? それがわからなければ、僕がそれを満たしているかどうかも判断がつかない。当然「僕とアズルが恋人関係にある」という仮定はいつまでも証明に辿り着けない。この疑問は堂々巡りだ。

 アズルが僕に求めることはなんだろう。毎日必ず30分は顔を見つめるとか、必ず良いところを5つ以上言うとか、必ず一回は身体を重ねるとか(どれも破られたことがある)。それを彼に聞いてみるべきだろう。しかしここまで書き記したことをそのまま伝えるのはきっと良くない。それは僕にもわかる。なにか良い切り出し方を考えなければいけない。

 まずはアズルに結論から尋ねてみるのはどうだろう。つまりこの関係を仮定にしておく必要がないのであれば、証明は必要なくなり、ルールだけを確認すればいいことになる。もしその仮定が否定されたら……この関係に新しい名前をつけなければいけない。そしてその関係のルールを確認する必要がある。どんな名前が考えられるだろう。アズルが以前それらしい言葉を口にしたような気がする。セックス・フレンドシップとか、そんな感じの言葉だったように思う。これも確認しておこう。いや、確認しない方がいいだろうか?