#010 日記について―オルシニウム

by Motandhel

 どうやら僕は日記というものを少し重く考えすぎていたらしい。雑談の中でミルが日記を書いていることをほのめかしたので、どんなことを書くのかと尋ねると、その日の売り上げの記録とただのメモだと言われた。彼は日記なんてそんなものだ、誰かに見せるためのものではないのだから、とも言った。なるほど確かにそうだと思い、今日はもう少し気楽に日記を書くことにした。

 先日アズルとロスガーに行った。プラチナの鉱石を数時間かけても見つけられないと言うミルの代わりに僕が探すことになり、アズルに相談したところ、はじめストンフォールを勧められた。そしてなんと僕たちはたった15分ほどで必要な数の鉱石を見つけられた。アズルはとても物知りだ。ミルには絶対に言えない。

 鉱石を探す仕事が思いがけず早く終わったので、僕たちは話題に上ったロスガーに行くことにした。僕にとっては初めての土地だった。ロスガーは南側と北側とでかなり風景が違う。南側は緑が生い茂り蝶が舞う美しい森林地帯だが、北側は雪と岩に覆われた険しい景色が広がる。ヴァーデンフェルもそうだが、同じ地域でも気候や風景が全く異なるのは、タムリエルの自然の偉大さを感じる。

 寒い場所に行くと知って期待していたが、オルシニウムの街歩きのときはアズルの首長服姿をまた見ることが出来た。いつもあまり厚着をしない(というか服を着ない)アズルなので、彼が毛皮のついたコートを着ているのは新鮮で、そして何よりとてもかっこいい。髪を下ろして上等な服を着ると、アズルはダンマーの名家の貴族のように紳士的に見える(実際ときどきを除いて彼は紳士だ)。俊敏でしなやかな獣が狩りをするように戦う彼の姿も好きだが、互いにリラックスした姿で並んで歩くのもとても心地よい。この日はどちらの彼も見ていたかったので、我儘を言って髪は結ったままでいてもらった。街を歩く途中、彼の姿を何度もまじまじと眺めてしまった。

 ロスガーはあまり馴染みがないだけに、とても素直な気持ちで街の風景を眺められたように思う。たまには何も難しいことを考えずに観光気分で歩き回るのも悪くない。むしろ僕にはそうした時間の方が大切かもしれない。

 少しは日記らしいものが書けただろうか?