#018 休息の取り方について―盗賊のオアシス・ザンミーア邸

by Motandhel

 長く続いていた祭りの季節が終わってから、僕とアズルは休息と呼べるような時間の過ごし方をしている。アズルの発掘の用事についていったり、彼が持っている地図の場所を一緒に目指したりすることが多いが、最近はお互いの家(あるいは持ち主であるお互いの仲間が不在の家)でのんびり過ごすことが増えた。

 僕はアズルが所有する盗賊のオアシスを訪ねるのがとても気に入っている。バンコライの東、古墳や遺跡に囲まれた砂漠の中にあるその家は、一つの町のように美しい土造りの建物が並ぶ道の奥に豊かな滝と湖が臨める素晴らしい場所だ。この景色を誰にも邪魔されずに楽しめるのは本当に贅沢で、裸になって泳いでいても誰にも変な顔をされないし、衛兵を呼ばれる心配もない(僕たちはたまに外の人気のない場所で同じことをするが、どんなに辺鄙な場所でもほとんど必ず運の悪い誰かに遭遇してしまう)。

 なにより僕が気に入っているのは、水上にあるベッドだ! 小高い場所にある小さな池の上、美しいモザイク屋根がついたテラスにベッドが置かれていて、そこで横になると滝の音と渓谷を抜ける風の音が気持ちがいい。僕が一度そこで眠って風邪を引いたので、アズルは建物の中にある寝室を勧めるのだが、そびえたつ遺跡の柱の隙間から夜空を眺めて眠りにつくのは格別だ。もちろん、一人きりではそうはいかないだろう。

 他にも僕たちはお互いの色々な家を訪ねた。ミルが見栄を張って家具付きで買ったまま足を踏み入れてもいないサイジック・ヴィラにも行った(彼はサイジックのことになると子供のような態度になる。理由は僕にはわからない。聞く勇気もない)。

 それから僕がアズルと過ごすために試行錯誤しているマークマイアのザンミーア邸にも足を運んだ。ザンミーア邸は正直に言って「邸」と呼ぶような場所ではない。住居と呼ぶにはいささか素朴なーーというか粗野な、苔の生した剥き出しの石の壁床は、住居というより遺跡のそれに近い。しかしやはりザンミーア邸の一番の魅力は、壁一面の魔法の窓だ。不思議な海底の植物やくるくる泳ぎ回る魚たちを二人で眺めていると、僕たちは時間を忘れてしまう。そしてそれ以上に、水を留める魔法の光に照らされたアズルの好奇心溢れる表情を見るのが、僕にとっては最も素晴らしい体験だ。

 ザンミーア邸にはまた近いうちにアズルを呼びたいと思っている。僕はすぐに気が散って色々なことに心が移りがちなので、家の飾りつけや家具の配置を決めることもなかなか集中できず、家の様子も散漫になってしまっている。また祭りの季節が訪れて忙しくなる前に、もう少し時間を取って中を整えておくことにしよう。