シルとの対話

英語版CWCクエストラインでのSotha Sil(ソーサ・シル)との会話を独自に日本語訳したもの。自分用に書き起こしたあとに公式日本語訳を読み、少しもったいないと感じる部分があったので置いておきます。正確さよりも語意の幅を広げてわかりやすい表現を選ぶことを重視しました。クエストラインに触れる部分は省いています。


ーー聞きたいことがたくさんあります。

わかっている。言ってみなさい、真実を包み隠さず話そう。真実が君を満足させられるかはわからないが。

ーー本当のところ、あなたは何者なんですか?

何か壮大なものを期待しているようだな。だが私は君に真実を約束しただけだ。

私は時と環境によって形作られる存在にすぎない。失われた家系の息子。倒れた王の友人。人とは自らの選択によって作られるものだと言う者もいるだろう。だが私はそうは思わない。

ーーでも、あなたは神なんですよね?

私は望まれるままの姿をした存在だ。守護者であり、圧政者である。ある者は乞い、ある者は疎む。私は願望や怒りを描くためのキャンバスであり、希望や疑いを受け止める器だ。

そして、鏡だ。ただそれだけの存在だ。

ーーそれなら、なぜあえて自ら神と名乗るんですか?

名乗ってなどいない。

だが仲間たちは……ヴィベクとアルマレクシアは、彼らの神性を重要だと考えているようだな。神の力は彼らに喜びと目的をもたらした。彼らがこの芝居の中に見出した役割を、私が奪うと思うか?


ーーヴィベクについてはどう思いますか?

ヴィベクは兄弟のような存在だ。彼は私の苦しみを知り、私もまた彼のそれを知っている。この理解が我々の関係を……複雑にしている。人を真の意味で理解することは、祝福でありながら、同様に呪いでもあるものだ。

ーー彼はどんな苦しみを?

後悔だ。我々は少なくともそれに縛られている。

そして彼は奴隷のような苦しみも負っている。私と全く同じだ。だがその足枷の鍵を握り彼を支配しているのは、美しさだ。美しさ、そして偉大な傑作を追い求める心。絶頂を追い求める心だ。彼はあまりにも貪欲で、それゆえに絶望している。

ーー絶望?

そうだ。詩人としての絶望だ。ヴィベクは根源的な自由を、つまり全ての制限や制約の死を渇望している。彼はあらゆる時代のあらゆる存在になることを願っている。全ての種族、全ての性別、全ての英雄、神であり人でもある存在に。……だが結局のところ、彼はヴィベク自身でしかないのだ。

ーー神の英雄になるだけでも十分では?

まったくもって不十分なのだろう。


ーーアルマレクシアについてはどう思いますか?

アルマレクシアは単純な分析を受け付けようとしない。彼女が自身のことを正確に描写することが出来るかどうかも疑わしいな。アルマレクシアのことを理解するには、まずは虚構の価値というものを理解することだ。ヴィベクは詩人を自負しているが、実際には語り手としてはアイエム(※アルマレクシアの愛称)の方が優れていると言える。

ーーどういう意味ですか?

ヴィベクは事実と虚構の境界を知っている。それを理解しているからこそ、その境界を壊す方法も覚えた。彼は詩の中に身を置きながら、そこにある嘘を認識している。その矛盾についてもだ。彼は自身の物語が正しいと信じるのと同時に、そうでないことも理解している。

ーーアルマレクシアはどう違うのですか?

彼女は自分の物語を絶対的に信じている。民が彼女の物語を信じるのと同じようにだ。彼女の偽りの能力は、まるで際限がない。腕のいい庭師が種を蒔くようにして嘘を広め、驚くほどに絶大な信頼と崇拝を収穫している。

ーーそれが気に障りますか?

いや、少しも。

言ったとおり、我々は皆それぞれの本質に縛られている。アルマレクシアがそうしたやり方を取るのは、そうすることしかできないからだ。いい結末は迎えないだろうな。とはいえ、最高の結末というものでさえも、満足をもたらすことはほとんどないものだが。


ーークロックワークシティはいったい何のためにあるんですか?

同じことを自分に尋ねることがある。君に告白しても?

ーーもちろんです。

私は特異な病を持っていてね。説明してみても?

私は確実性という恐ろしい重圧を背負っている。完全で、絶対的で、妥協のない確実性だ。人は疑うということがどれほど贅沢なことであるかを理解していない。……そして躊躇いや迷いが生み出す自由についても同じだ。私は君が羨ましいんだ。

ーーシティの価値について疑問に思うと言いませんでしたか?

そうだな。だがそんな疑問は怠惰な、一瞬で立ち消えするくだらない甘えに過ぎない。実際のところ、私の行動は、善悪のいずれもが必然なのだ。すべてが時間に縛られ、行動と結果の連鎖によって定められている。

ーーつまり……あなたは強制的にクロックワークシティを作らされたということですか?

作らざるを得なかったのだ。

このシティは崇高な目標のために存在している。タムリエルの贖罪。敵対する勢力の統一。デイドラの崩壊。残念ながら、この試みは死体で編まれた格子の上に築かれている。死体と、裏切りと、計り知れない恐怖で編まれた格子の上にだ。わかるかね?


ーー多分……?

「多分」。私が何より羨望を覚える言葉だ。

友よ、その言葉を持ち続けなさい。決して手放してはいけない。


ーーわかります。

そうか。気の毒に。


ーーわかりません。

いいことだ。この先もそうであることを祈ろう。


ーーなぜ私のことを囚人と呼ぶのですか?

無理もないだろう。説明が必要だな。

周りを見てみなさい。全てのものは存在するべくして存在している。私が今この時、ここで、こうして立っているのは、私がそう望むからではなく、私がそうすべきだからだ。これは行動と結果が生んだ答えなのだ。

ーーそれはあなたが囚人だということでは?

聡いな……だが正解ではない。

囚人は二つの重要な視点を持たなければならない。一つ目は、自身が囚われているという現実を見つめる視点だ。彼らは自らを囲む壁を、そして自分をその道に縛り付けている因果の鎖を見つめなければならない。

ーーあなたはそれが出来ていないと?

いや。私には二つ目の視点がないのだ。

囚人は独房の扉を見なければいけない。その鉄格子のあいだから外を眺め、自分を取り囲む因果の壁、時間の壁の向こうに何が存在するのかを認識しなければいけない。そうしない限り、抜け出すことはできないのだ。

ーーあなたには扉が見えないのですか?

私の目には不安定な壁だけが映っている。

タムリエルの民がこの独房の中にいなければならないならば、私は不安定な壁を直し、隙間を埋め、残る全ての民が安全に過ごせるように手を施す者でいよう。



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