#008 未来について―イーストマーチ

by Motandhel

 前回イーストマーチに足を運んだのは最近のことだ。そのときもアズルと二人だった。時間は夜で、僕たちはウィンドヘルムの街灯がともる路地裏を歩いたり、祭りの夜に浮かれる人々の様子を見たりして回った。今度は昼間の街も見に来ようと話したので、今回まだ日がある時間に落ち合った僕たちはもう一度イーストマーチへ行くことにした。

 イーストマーチは比較的馴染みのある土地だ。僕の旅はまずダンマー文化を学ぶためにヴァーデンフェルから始まり、次はパクト領という順番だったので、イーストマーチもほぼ全域を隈なく回った。しかしこの土地に関して強く記憶に残っているのは、スカルド王ジョルンやその息子のイルンスカー王子たちとの戦いではなく、ニューライフ、そしてオールドライフの祭りの思い出だ。

 クロックワーク・シティでこれまでの人生の大半を過ごした僕にとって、タムリエル全土で催されるこの祭典は奇妙で、そしてとても魅力的だった。中でも冷たい水の中に飛び込んでから炎のそばで踊るノルドの祭りは非常に奇妙で、そして危険を伴うにも関わらず、とても愉快だった。イーストマーチに流れる川の水は、険しい岩場と雪の間をくぐり抜けるせいか驚くほどに澄んでいる。ここへ飛び込むのは、泥と水草に覆われたヴァレンウッドの湿地を歩くことよりも抵抗を覚えなかった。

 アズルは祭りに参加したことがないと言っていた。祭りで川に飛び込む決まりになっている場所を案内したり、人々が集まる場所である焚き火の周りに座ってみたりするうちに、アズルが「今度は一緒にやろう」と僕に言った。僕が返事に迷っていると、彼は「すごく先だけど」と言って笑った。

 アズルが未来の話をするとき、僕はどう答えればいいかわからなくなるときがある。「明日はあれをしよう」「次からはそうしよう」「今度は一緒に行こう」「またあとでね」――彼はそんな言葉をとても自然に口にする。彼に出会って初めの頃は、その言葉をどう受け止めればいいかわからなかった。今でも自分からそうした言葉を使うときは少し緊張するくらいだ。

 この世界は予測できない変化と激動に満ち、僕の(人よりも)長い人生の中で果たされなかった約束や失われた未来は数えきれないほどに存在した。いつからか僕は未来のことを考えないようになり、過去を思い出すこともせず、「今」のことだけを見つめる盲目的な人間になってしまった(これはハートによく注意される)。アズルとともに時間を過ごすようになって、この悪い癖は少し変わってきたように思う。

 冷たく澄んだ川の流れをアズルと並んで見つめながら、僕はアズルと祭りに参加する未来について少しだけ考えた。新しい年が近づくその頃に、僕が想像する未来が存在するかどうかはわからない。しかしきっとこのイーストマーチを流れる水の冷たさと美しさはそのときも変わっていないだろう。十年、百年、数百年。それだけの時が流れても、この土地の静かな厳しさと美しさは存在し続けている。少なくともその未来だけは信じたい。