#006 モロウィンドについて―ヴァーデンフェル

by Motandhel

 とても難しいテーマを選ぶことになった。僕にとってモロウィンドという土地について考えることは、あらゆる地域の特徴や比較を語るのとは全く別のことになる。そしてこの地域を出自とするダンマーという種族についても同じことが言える。正直に言えば、向き合うことを避けているテーマでもある。

 アズルは僕のことをダンマー好きだと思っているようだ。街でダンマーの人と話をすると何か言いたそうにするし、ときどきはそのことに関して意地悪を言う。実際ダンマーの人に惹かれることは多い。あの研ぎ澄ました宝石のような目や、夜闇を思わせるしたたかな佇まいは、とても美しく魅力的だ。しかしその風貌の由来を考えると複雑な心情にならざるを得ない。ダンマーという種族は僕にとってよくも悪くも特別な存在だ。

 先日アズルとヴァーデンフェルのサドリス・モラに行った。ヴァーデンフェルは地域によって街並みや生活がかなり異なる。テルヴァンニの魔術師が治める地域一帯は曲がりくねった木と熟れた果実の形をしたガラスで作られた調度品が特徴で、また建築物は石造りの建物を島に自生する菌類が覆う異様とも言える外観をしている。アズルは街の小さな家を見て「可愛い」と表現した。僕はなんと返せばいいか分からなかった。

 アズルにヴァーデンフェルが好きかと尋ねると、彼はそうでもないと言った。そして彼はこの街を、そしてモロウィンドを「のどかだけど怖い場所」と表現した。僕もそれに同意した。ここには決して溶け合うことのない染料が混ざり切らないままに渦を巻いているような、ドロドロとした混沌が横たわっている。旅のあいだで一番長い時間を過ごした土地ではあるが、自分がいるべき場所ではないだろうと感じることも多い。

 気持ちが晴れず、翌日僕はヴァーデンフェルで思い入れのある場所や人を訪ねた。テル・ファーにいる恩師に会ったのは相当に久しぶりだった。彼が僕の顔を見るなり面倒臭そうな顔をするので、一言二言だけ言葉を交わして立ち去った。彼は以前よりもさらに多忙そうに、生き生きとして見えた。

 グニシスのリヴスと最近のお互いの研究について語り合えたのは素晴らしい時間だった。彼とはまた近々会うことにした。ドワーフの建築に関して書かれた本を彼に貸すと約束した(忘れずに持っていかなければいけない)。

 グニシスの穏やかな街並みを眺めながら、僕は単にこの土地が好きなのだと、それだけを結論づけた。モロウィンドの険しくも鮮やかな景色と、この土地でダンマーの人々が築き上げた生活と文化が。その背景に僕のような余所者には触れられない悍ましい歴史があろうとも、僕はこの土地と人々に魅力を感じ続けるだろう。

 色々なことに思いを巡らせるうちに、少しだけシティが恋しくなった。あのどこまでも不完全で壊れた街と、懐かしい眼差し、声。当分戻る予定はない。たまには思い出して感慨に耽るのも悪くないだろう。